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2026年01月15日

AIブームに乗る半導体業界、課題は人材不足【業界研究ニュース】

精密機器・電子機器

 年明けの株価が上昇しています。そのけん引役はAI(人工知能)ブームに乗る半導体業界の会社です。中でも半導体製造装置をつくる東京エレクトロン、半導体検査装置をつくるアドバンテスト、イギリス半導体設計大手「アーム」を傘下に持つソフトバンクグループの3社が相場を引っ張っています。AIが動くためにはコンピューターを格納するデータセンターが必要で、そこには大量の半導体が使われます。今後、高性能の半導体がこれまで以上に求められる社会になることはほぼ確実なのです。遅ればせながら日本政府も成長戦略のかなめとして半導体を重視するようになりました。政府が全面支援する半導体製造会社「ラピダス」は現在工場を北海道千歳市に建設し、2027年から高性能半導体の量産を目指しています。

 日本は半導体そのものの分野では世界からやや後れをとっていますが、半導体製造装置や材料などの周辺分野には強みを持っています。ただ、日本の半導体業界の課題は人材不足です。20世紀終盤からの「半導体冬の時代」に人材が離れていき、新しい人材も十分に養成できていないのです。逆に言えば、今からでも勉強すれば求められる人材になる可能性があります。若い人には魅力のある業界になりつつあるのかもしれません。
(写真・次世代半導体の量産をめざす「ラピダス」の工場=2025年6月12日/写真、図版はすべて朝日新聞社)

エヌビディアの時価総額は5兆ドル超える

 半導体業界は世界でフラットに競争しています。日本は1980年代には世界トップのシェアを誇っていましたが、1990年代には韓国や台湾の追い上げによってトップから転落しました。21世紀になると、アメリカが存在感を増してきました。2022年に画期的なAIであるチャットGPT がアメリカのベンチャーから発表されてアメリカ発のAIブームが起き、AIに必要な先端半導体をつくるアメリカメーカーのエヌビディアは株式の時価総額が世界で初めて5兆ドル(約800兆円)を超えました。日本の国家予算の6倍以上の大きさです。台湾や韓国も世界で戦えるレベルにあり、日本はこれではいけないと、台湾積体電路製造(TSMC)の工場を熊本に誘致したり、国産の先端半導体を量産するための会社であるラピダスを立ち上げたりして、力を入れています。

ラピダスはTSMCと似たビジネスモデル

 半導体関係のメーカーは、半導体そのもののつくる会社と半導体をつくるために必要なものをつくる会社に分かれます。日本の半導体そのものをつくる会社としては、東芝から分かれてできたキオクシアや三菱電機富士電機ルネサスエレクトロニクスソニーなどがあります。これらの会社はそれぞれ特定の分野に強みを持っていて、キオクシアは記憶装置としての半導体の分野で世界3位です。また、電流や電圧をコントロールするパワー半導体の分野では、三菱電機や富士電機が世界の上位に入っています。ルネサスエレクトロニクスは自動車向けの半導体に強く、ソニーはカメラから入ってくる情報をデジタルに変換するイメージセンサーの分野に強みを持っています。ラピダスはこうした会社と違い、AIなどにも使われる先端半導体の受託生産を目指す会社で、世界最大規模の半導体メーカーであるTSMCと似たビジネスモデルです。これから世界で競争できる会社に成長できるか、注目されます。
(写真・東京証券取引所プライム市場に上場したキオクシアホールディングス=2024年12月18日)

半導体の周辺には世界トップクラスがいくつも

 半導体をつくるために必要なものをつくる会社には世界的な会社が日本にいくつもあります。東京エレクトロンは半導体の前工程をつくる装置、アドバンテストは半導体の検査装置をそれぞれつくる会社で、いずれも世界トップクラスです。SCREENホールディングスも半導体や材料の洗浄装置メーカーとしては世界トップクラスです。半導体の基板であるシリコンウェハーの世界トップメーカーは信越化学工業で、 SUMCO も高いシェアを持っています。回路を基盤に焼き付けるために必要な化学薬品であるフォトレジストではJSR東京応化工業などの日本メーカーが圧倒的な世界シェアを持っています。回路を基盤に焼き付けるための露光装置では、ニコンキヤノンも存在感を示しています。

フィジカルAIが注目される

 半導体の将来性を疑う人は今やほとんどいません。AIは今後ますます発達すると考えられるためです。今おもに使われているAIは文章や会話によって人を助けていますが、これからはフィジカルAI=ロボットや移動機器など物理的な機能と統合されたAIが注目分野となるでしょう。人形のロボットを想像するとわかりやすいかもしれません。介護や配達などの分野で人間のように働くロボットがいれば、非常に助けられることになるはずです。こうしたAIを動かすにはインターネット通信と膨大なデータ処理が必要になります。その機能を果たすのが、サーバーと呼ばれるコンピューターを大量に格納するデータセンターです。現在も日本のあちこちで建設されていますが、これからもっと必要になると考えられています。このデータセンターにも多くの半導体が使われます。
(写真・エヌビディア製の半導体を使って開発したロボットたち=2026年1月5日、アメリカ・ラスベガス)

理系人材だけでなく文系人材も

 日本の半導体産業の課題は、人材不足です。台湾、韓国、アメリカなどに追い抜かれていった過程で、半導体の技術者が少なくなっていきました。企業内では配置転換やリストラがあり、大学では半導体関連の研究が下火になっていきました。こうしたことから、TSMCやラピダスは眠っている半導体人材の掘り起こしや新しい人材の育成を通じて採用増を図っています。ラピダスは今の1千人ほどの社員を量産が始まる段階では2千人体制に増やす計画です。TSMCも横浜や大阪に開設したデザインセンターで優秀な日本人技術者や学生の採用を進めています。高い給与などの待遇改善も進んでいます。理系人材だけでなく国際的な交渉や管理ができる文系人材も必要とされています。半導体というとむずかしそうだと思うでしょうが、いろいろな職種があるので、関心のある人は調べてみるといいでしょう。

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